(閲覧注意)「おしりが4つしっぽが5本」より
「おしりが4つしっぽが5本」山中恒作 原ゆたか絵
山中先生はすばらしい本を書かれたし、挿絵の原ゆたか先生の絵もドキドキする。お二人ともこの分野に関して何らかの考えがあったに違いない。
残念なのは登場人物に女子がいるということだ。男性同性愛者の俺のような人間には性的なイメージに女性が入ってくるのはやはり嫌である。
この本に登場するミツオ、高原先生、ハジメ、ムジナのじじいは全員大好きだ。やっぱり男はエロい。特に高原先生の一人称が「先生」から「おれ」に変わるところでも雄を感じた。
以下に好きな場面を引用するが、読んだことがない人や著作権を考慮して反転しておく。
「なるほど。……。どうかね。そのれんちゅうに、しっぽを生えさせるっていうのは……。」
「しっぽ?」
「ああ、そうだよ。しりにはえている、しっぽのことさ。」
ミツオはかんがえました。しっぽのはえた高原先生……これはもう、ブタがタヌキになるかもしれません。
(略)
杉山ハジメだって、こそこそしているので、イタチみたいになるかもしれません。
「うん、しっぽをはやしてやるっていうのは、いいなあ。それなら、おもしろいとおもうよ。」
「そうかね。それならおもしろいかね。」
「ああ、おもしろいにきまってるよ。」
「それじゃ、ひとつ、それでいこうかな。」
そういうと、おじいさんは、にやっとわらいました。
「それでいこうってことは、それができるっていうことなの?」
おじいさんは、それにへんじをせずに、四角なふろしきづつみを、ひろげました。なかに四角な、やなぎごうりがはいっていました。
その、やなぎごうりのふたをとると、なかには、びっしりと、紙ぶくろがたてにつまっていました。
「なあに?このたくさんある紙のふくろは。」
「これかい?薬さ。じつは、このなかに、しっぽのはえる丸薬があるんだ。」
おじいさんは、きれいにならんだ紙のふくろの口を、手でピーッと、音をさせて、なぜました。すると、そのなかのひとつが、ぴっととびました。
「これだ、これだ。これはな、秘薬……つまり、ひみつの薬だ。名前は『ムジナノトモ』といってな、心にやましいことのあるものがのむと、たちまち、しっぽがはえるという、ふしぎな薬だ。」
「へえ!そんな薬があるなんて、しらなかったなあ。」
「これを、おまえさんにあげよう。はえたしっぽをなくしたいときは、丸薬をもうひとつのめば、その場で、しっぽはきえる。」
(略)
ミツオは、紙ぶくろの口をあけて、なかをのぞきこんでみました。なんだか、カボチャのたねみたいな色をした、白いぺたんこの薬が、五つはいっていました。
(ま、しっぽがはえるなんて、だいたいうそにきまってるよ。でも、ほんとに、しっぽがはえたら、ずいぶんとおもしろいだろうな。あいつら、みんなひいひいなくだろうなあ。ブタバラフトシだって、こしをぬかすだろうな……。)
(略)
「そうだ、おれ、いいものをもってたんだ。」
ミツオは、むねのポケットから、紙ぶくろをひっぱりだしました。
「いいか、このなかの薬はな、心のなかに、やましいことのあるやつがのむと、しっぽがはえるという、すごい薬なんだ。(略)だから、おれはこの薬をのんでも、へいきなんだ。」
(略)
「どうだ、おまえら、この薬をのんでみろよ!」
(略)
ハジメはハジメで、うすわらいをうかべて、
「おまえがのんだら、おれものむよ。」
といいました。
「あれ?そんなことをいうところをみると、おまえら、おれがやりもしないことを、わざとおれのせいにしたからだろう。そんで、薬をのんで、しっぽがはえたらたいへんだと、おもってるんだろう。」
(略)
「なにをばかばかしいこといっているんだよ。そんなことをいうなら、吉村、おまえこそ、その薬をのんでみろ。」
ミツオはだまって、つくえの上の薬を、ひとつぶとると、口のなかへほうり込みました。口のなかで、くすりはすぐにとけ、なんともいえない、あまい味が口のなかにひろがりました。
「どんな味だ?」
高原先生がききました。
「あまいです。」
「どれどれ。」
高原先生も、ひとつぶつまんで、口へいれました。
「うん。かたいとおもったのに、すぐとけてしまったな。」
それをみて、杉山ハジメも、ひとつつまんで、口へいれました。そして、「ほんとに、あまいや」というように、高原先生をみて、うなずきました。
(略)
「なんだと!」
ミツオは、あわてて、しりに手をやりました。
ズボンのちょうどしりのわれめの上のところが、ぽこっとふくらんでいました。そのふくらみにそって、手をあげていくと、なにやら、ふさふさしたものが手にさわりました。その、ふさふさしたものは、ズボンと、上着のあいだから、うしろへ、にゅうっとつきでていました。
「や、やばい!」
ミツオは、あわててつくえの上をみました。もうひとつ薬をのんで、そのしっぽをけしてしまおうとおもったのです。それなのに、あとひとつのこっているはずの薬は、つくえの上になかったのです。
ミツオは、ゆかにはいつくばるようにして、薬をさがしました。
「おい、吉村。ちょっとそのままにしていろ。」
そういうと、先生がミツオのうしろへまわりました。
「オッホッホッホ!はえてる、はえてる!りっぱなやつが、ズボンから、にゅうっとはえてるぞ。アハハハ……。」
高原先生は、はらをかかえて、わらいました。さすがにミツオは、まっさおになりました。からだじゅうの力がぬけていくみたいでした。
ミツオは、ひっくりかえるようにして、わらっている高原先生を、うらめしそうにみました。
そのミツオがへんなことに気がつきました。
高原先生のジャンパーのせなかが、まるでラクダのこぶのように、もこっと、ふくらんでいたのです。
「あれえ?」
「どうかしたか?」
高原先生は、ミツオの視線に気づくと、なにげなく、せなかへ手をやりました。その手がぴたりとうごきをとめました。先生の顔もこわばったようになりました。それから、先生は大いそぎで、ジャンパーをぬぎました。トレーニングパンツのこしのゴムのところから、ふとい、大きなしっぽが、にゅうっとはえていました。
ふといところは、ミツオの顔ほどの大きさがありました。しかもそれが、うえのほうで、ゆらゆらとゆれていたのです。
「こ、こりゃ、いったい、どういうことなんだ?」
先生も、とほうにくれたような声をだしました。
それをみて、杉山ハジメが、とびあがって、わらいだしたのです。
「アハハ、やった、やったあ!せんせいにしっぽがはえちめえやがら。アハハハ、おもしれえ、おもしれえ!」
そのハジメが、なにかをふんづけたらしく、あおむけに、ゆかにひっくりかえりました。そのハジメの足が、三本ありました。もちろん、足が三本のわけがありません。その一本は、まちがいなく、ふさふさと毛のはえたしっぽだったのです。
(略)
「ばか!シッポのはえたスターなんかいるか。しっぽがはえてるなんて、かっこういいことじゃないぞ!」
そういうと先生はじぶんのしっぽを、なぜました。
「いっそ、じぶんたちで、こっそり、切りおとすか?あとからはえてきたものだから、切ったって、いのちに別条はないだろう。」
そういって、先生は、じぶんのしっぽを、ぎゅっとつかんで、ひっぱりました。そしておもわず、
「あいたた……。」
と、ひめいをあげました。みんなも、先生のまねをして、しっぽをひっぱり、先生と同じように、ひめいをあげました。
「こりゃだめだ。ちょっとひっぱっても、こんなにいたいんだから、切るとなったら大ごとだぞ。そうかって、このまま、しっぽをつけていたら、えらいことになるぞ。ま、いまのうちなら、しっぽをひもでしばって、からだにぴしゃっとおしつけて、すこし大きめのズボンとか、シャツをきて、ごまかすという手はあるけど……。もうじき、学校のプールがはじまるし……。そうなりゃ、いっぺんにばれてしまう。」
(略)
こういうのを、とほうにくれると、いうのでしょう。みんなは、どうしていいかわからず、それぞれのしっぽをつかんで、ぼんやりゆかをみて、ときどき、ためいきをつくだけでした。
(略)
というのも、車にのっている四人が、みんな、しっぽのはえたなかまだという気もち……つまり、じぶんがひとりぼっちではないとおもったからです。
(略)
「あの、ブタヤのおじさんの話だよ。おれ、おまえが、でまかせをいったんだとおもったんだよ。なにしろ、おれの前の学校でのあだ名も『ブタバラフトシ』だったからな。どうも、おれは早とちりをする、わるいくせがあるらしい。」
「うん、でも、おれも、音楽の時間、ブタの声でぶうぶうってやったもの。」
「そうだ。おまえはわるいやつだよ。」
でも、先生の顔はわらっていました。
(略)
「ほんとうのことをいって、先生は、さっきは、おまえだけが、たよりだったよ。(略)それと、これから、この四人は、あんまり、しっぽのはえるようなつきあいは、しないことにしようや。ただし、おれのことを、ブタバラフトシなんていうやつは、たとえ、このなかまでも、ぶっとばす!」
山中先生はすばらしい本を書かれたし、挿絵の原ゆたか先生の絵もドキドキする。お二人ともこの分野に関して何らかの考えがあったに違いない。
残念なのは登場人物に女子がいるということだ。男性同性愛者の俺のような人間には性的なイメージに女性が入ってくるのはやはり嫌である。
この本に登場するミツオ、高原先生、ハジメ、ムジナのじじいは全員大好きだ。やっぱり男はエロい。特に高原先生の一人称が「先生」から「おれ」に変わるところでも雄を感じた。
以下に好きな場面を引用するが、読んだことがない人や著作権を考慮して反転しておく。
「なるほど。……。どうかね。そのれんちゅうに、しっぽを生えさせるっていうのは……。」
「しっぽ?」
「ああ、そうだよ。しりにはえている、しっぽのことさ。」
ミツオはかんがえました。しっぽのはえた高原先生……これはもう、ブタがタヌキになるかもしれません。
(略)
杉山ハジメだって、こそこそしているので、イタチみたいになるかもしれません。
「うん、しっぽをはやしてやるっていうのは、いいなあ。それなら、おもしろいとおもうよ。」
「そうかね。それならおもしろいかね。」
「ああ、おもしろいにきまってるよ。」
「それじゃ、ひとつ、それでいこうかな。」
そういうと、おじいさんは、にやっとわらいました。
「それでいこうってことは、それができるっていうことなの?」
おじいさんは、それにへんじをせずに、四角なふろしきづつみを、ひろげました。なかに四角な、やなぎごうりがはいっていました。
その、やなぎごうりのふたをとると、なかには、びっしりと、紙ぶくろがたてにつまっていました。
「なあに?このたくさんある紙のふくろは。」
「これかい?薬さ。じつは、このなかに、しっぽのはえる丸薬があるんだ。」
おじいさんは、きれいにならんだ紙のふくろの口を、手でピーッと、音をさせて、なぜました。すると、そのなかのひとつが、ぴっととびました。
「これだ、これだ。これはな、秘薬……つまり、ひみつの薬だ。名前は『ムジナノトモ』といってな、心にやましいことのあるものがのむと、たちまち、しっぽがはえるという、ふしぎな薬だ。」
「へえ!そんな薬があるなんて、しらなかったなあ。」
「これを、おまえさんにあげよう。はえたしっぽをなくしたいときは、丸薬をもうひとつのめば、その場で、しっぽはきえる。」
(略)
ミツオは、紙ぶくろの口をあけて、なかをのぞきこんでみました。なんだか、カボチャのたねみたいな色をした、白いぺたんこの薬が、五つはいっていました。
(ま、しっぽがはえるなんて、だいたいうそにきまってるよ。でも、ほんとに、しっぽがはえたら、ずいぶんとおもしろいだろうな。あいつら、みんなひいひいなくだろうなあ。ブタバラフトシだって、こしをぬかすだろうな……。)
(略)
「そうだ、おれ、いいものをもってたんだ。」
ミツオは、むねのポケットから、紙ぶくろをひっぱりだしました。
「いいか、このなかの薬はな、心のなかに、やましいことのあるやつがのむと、しっぽがはえるという、すごい薬なんだ。(略)だから、おれはこの薬をのんでも、へいきなんだ。」
(略)
「どうだ、おまえら、この薬をのんでみろよ!」
(略)
ハジメはハジメで、うすわらいをうかべて、
「おまえがのんだら、おれものむよ。」
といいました。
「あれ?そんなことをいうところをみると、おまえら、おれがやりもしないことを、わざとおれのせいにしたからだろう。そんで、薬をのんで、しっぽがはえたらたいへんだと、おもってるんだろう。」
(略)
「なにをばかばかしいこといっているんだよ。そんなことをいうなら、吉村、おまえこそ、その薬をのんでみろ。」
ミツオはだまって、つくえの上の薬を、ひとつぶとると、口のなかへほうり込みました。口のなかで、くすりはすぐにとけ、なんともいえない、あまい味が口のなかにひろがりました。
「どんな味だ?」
高原先生がききました。
「あまいです。」
「どれどれ。」
高原先生も、ひとつぶつまんで、口へいれました。
「うん。かたいとおもったのに、すぐとけてしまったな。」
それをみて、杉山ハジメも、ひとつつまんで、口へいれました。そして、「ほんとに、あまいや」というように、高原先生をみて、うなずきました。
(略)
「なんだと!」
ミツオは、あわてて、しりに手をやりました。
ズボンのちょうどしりのわれめの上のところが、ぽこっとふくらんでいました。そのふくらみにそって、手をあげていくと、なにやら、ふさふさしたものが手にさわりました。その、ふさふさしたものは、ズボンと、上着のあいだから、うしろへ、にゅうっとつきでていました。
「や、やばい!」
ミツオは、あわててつくえの上をみました。もうひとつ薬をのんで、そのしっぽをけしてしまおうとおもったのです。それなのに、あとひとつのこっているはずの薬は、つくえの上になかったのです。
ミツオは、ゆかにはいつくばるようにして、薬をさがしました。
「おい、吉村。ちょっとそのままにしていろ。」
そういうと、先生がミツオのうしろへまわりました。
「オッホッホッホ!はえてる、はえてる!りっぱなやつが、ズボンから、にゅうっとはえてるぞ。アハハハ……。」
高原先生は、はらをかかえて、わらいました。さすがにミツオは、まっさおになりました。からだじゅうの力がぬけていくみたいでした。
ミツオは、ひっくりかえるようにして、わらっている高原先生を、うらめしそうにみました。
そのミツオがへんなことに気がつきました。
高原先生のジャンパーのせなかが、まるでラクダのこぶのように、もこっと、ふくらんでいたのです。
「あれえ?」
「どうかしたか?」
高原先生は、ミツオの視線に気づくと、なにげなく、せなかへ手をやりました。その手がぴたりとうごきをとめました。先生の顔もこわばったようになりました。それから、先生は大いそぎで、ジャンパーをぬぎました。トレーニングパンツのこしのゴムのところから、ふとい、大きなしっぽが、にゅうっとはえていました。
ふといところは、ミツオの顔ほどの大きさがありました。しかもそれが、うえのほうで、ゆらゆらとゆれていたのです。
「こ、こりゃ、いったい、どういうことなんだ?」
先生も、とほうにくれたような声をだしました。
それをみて、杉山ハジメが、とびあがって、わらいだしたのです。
「アハハ、やった、やったあ!せんせいにしっぽがはえちめえやがら。アハハハ、おもしれえ、おもしれえ!」
そのハジメが、なにかをふんづけたらしく、あおむけに、ゆかにひっくりかえりました。そのハジメの足が、三本ありました。もちろん、足が三本のわけがありません。その一本は、まちがいなく、ふさふさと毛のはえたしっぽだったのです。
(略)
「ばか!シッポのはえたスターなんかいるか。しっぽがはえてるなんて、かっこういいことじゃないぞ!」
そういうと先生はじぶんのしっぽを、なぜました。
「いっそ、じぶんたちで、こっそり、切りおとすか?あとからはえてきたものだから、切ったって、いのちに別条はないだろう。」
そういって、先生は、じぶんのしっぽを、ぎゅっとつかんで、ひっぱりました。そしておもわず、
「あいたた……。」
と、ひめいをあげました。みんなも、先生のまねをして、しっぽをひっぱり、先生と同じように、ひめいをあげました。
「こりゃだめだ。ちょっとひっぱっても、こんなにいたいんだから、切るとなったら大ごとだぞ。そうかって、このまま、しっぽをつけていたら、えらいことになるぞ。ま、いまのうちなら、しっぽをひもでしばって、からだにぴしゃっとおしつけて、すこし大きめのズボンとか、シャツをきて、ごまかすという手はあるけど……。もうじき、学校のプールがはじまるし……。そうなりゃ、いっぺんにばれてしまう。」
(略)
こういうのを、とほうにくれると、いうのでしょう。みんなは、どうしていいかわからず、それぞれのしっぽをつかんで、ぼんやりゆかをみて、ときどき、ためいきをつくだけでした。
(略)
というのも、車にのっている四人が、みんな、しっぽのはえたなかまだという気もち……つまり、じぶんがひとりぼっちではないとおもったからです。
(略)
「あの、ブタヤのおじさんの話だよ。おれ、おまえが、でまかせをいったんだとおもったんだよ。なにしろ、おれの前の学校でのあだ名も『ブタバラフトシ』だったからな。どうも、おれは早とちりをする、わるいくせがあるらしい。」
「うん、でも、おれも、音楽の時間、ブタの声でぶうぶうってやったもの。」
「そうだ。おまえはわるいやつだよ。」
でも、先生の顔はわらっていました。
(略)
「ほんとうのことをいって、先生は、さっきは、おまえだけが、たよりだったよ。(略)それと、これから、この四人は、あんまり、しっぽのはえるようなつきあいは、しないことにしようや。ただし、おれのことを、ブタバラフトシなんていうやつは、たとえ、このなかまでも、ぶっとばす!」
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